パリ事情(2019年_4月号)

 日本M&A協会主催のパリ国際会議に参加してきた。
国際会議といっても日本全国の会計事務所から集まった560名の日本人が一堂に会してパリで会議を行うという開催地だけが国際的な国際会議なのだが、それでも海外から日本を見るという点で得るものが多い。

 これまでもシンガポール、シリコンバレー、ドバイといったその時々で世界の変化を知るうえで重要な地点で開催され、これらの地域の経済状況、金融政策、税制、世界に与える影響などを在住の学者、金融関係者、経営者、会計士などからレクチャーを受け、世界における日本の位置づけ、今後の日本への影響などを知るうえで今回のパリ国際会議を含め大いに意義深いものがあった。

 そんな中で今回は「会計事務所の成長戦略とM&A」と題するパネルディスカッションが開かれ、私と旧三澤経営センターの三澤壯義先生もパネラーとして登壇させていただいた。「すべての産業は寡占化の歴史」と言われるようにどんな業界でも時を経るにしたがって寡占化が進んでいく。百貨店であれ、スパーであれ、鉄鋼業界であれ、造船業界であれすべての業界は3,4社のナショナルチェーンと地域No.1 の企業とで市場の過半を掴むという歴史がある。
会計業界も今後寡占化が進んでいくであろうという見立てである。全国展開するいくつかの大型会計事務所と地域No.1の会計事務所で市場のかなりのシェアを握るであろうという予測であり、昨年のあさひ会計の統合はその先駆けとして全国的に注目を集めている。あさひ会計が全国の会計事務所に先駆けて実施している会計業務のRPA化(業務のパソコンによるロボット化)や経営改善手法としてのMQ会計の展開も一定規模の会計事務所だから開発が可能なのだというのだ。

 パリではカデラスマルタンという総員数110名の中堅会計事務所にも訪問してきた。
この会計事務所は300件(全顧客先の1/3)の日系企業を顧問先として持っており、ジャパンデスクでは10名の日本人が働いていた。フランスに進出している日系企業はファッション、電子、自動車、化学等の大手企業から最近ではラーメン店、箸、包丁といった地方の中小企業も進出しているという。

 フランスの税制も特徴があった。法人税率は現在の30%から2022年には25%に下がり、法人税の欠損金繰越は無期限で出来、研究開発費用は最大30%の税額控除が受けられる。
 付加価値税(消費税)は20%とかなり高い。個人税制では、所得税は5段階の累進税で最高税率は45%、かつ高所得者には特別負担税として3%が課せられる。一方、子供1人に対して0.5の係数が付加され上限はあるが減税される。また、一定額以上の不動産保有者には不動産富裕税も課せられている。

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