不況の予兆(2019年_12月号)


 
 企業の2019年度下半期の業績見通しは、米中貿易摩擦のあおりや日韓関係の悪化等で不透明感がぬぐえない。特に製造業の苦戦は想定以上で、製造業の上場企業上半期(4~9月期)決算の純利益は対前年比31%減である。特に電気機器54%減、自動車・部品16%減、化学22%減と主要業種が軒並み苦戦しており、2020年3月期通期の業績予想の下方修正が相次いでいる。
 上場企業の業績悪化を受けて下請けである製造業の中小企業も、上半期の業績は下降基調の中で何とか耐え忍んできたものの、下半期は大幅な受注減が予想されており、すでに名古屋地区では休業等による雇用調整助成金の適用が多数の企業で実施されているという。
 非製造業では上半期で製造業ほどの落ち込みはなかったものの、建設業では都市開発などの大型案件も一段落し、小売業では消費税増税前の駆け込み需要の反動もあり、下半期にかけては業績の不透明感が強い。
 一方、世界経済の中心である米国では債券市場で10年債利回りが2年債利回りを下回る「長短金利の逆転」(=逆イールド)現象が起きており、景気後退の前兆ではないかとみられ警戒されている。さらに中国、ドイツの経済指標も冴えないところから、米国の景気後退懸念のリスク回避としての円の購入がドル安・円高につながったとみられている。
 そもそも長期金利が短期金利より低いということは現在よりも将来に対する不安の方が大きいということであり、日本においても10年物の利付国債が△0.09%、2年物の利付国債が△0.2%とマイナス金利が続いており、行き場を失った資金が現在の株高を演出しているといっていいだろう。

 ところで過去の経験則では米国の10年物と2年物の国債利回りが逆転してから2~3年後に景気後退が始まり、景気後退局面に入った後に株価が暴落し不況に突入している。そうなって欲しくは無いものの、昨今の企業業績の状況を見ていると不況が近づいているように見えるのである。企業経営者の皆様にはくれぐれも油断召されるなということであり、冗費を抑え、新規投資を慎重に判断し、内部留保を高め不況に備えて頂きたいということである。

 稲盛和夫京セラ名誉会長はこういった局面でも厳しい。中小企業に不況などないというのである。需要の1%にも満たないシェアで不況など関係ない。創意工夫でいくらでも業績は伸ばせるはずだという。全員で営業し、新製品開発に全力を尽くし、原価を徹底的に引き下げ、余剰人員を生産ラインから切り離して高い生産性を維持し、苦楽を共にできる良好な人間関係を築き強固な経営基盤を作れ。不況はチャンスなのだというのである。

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