「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」というマルクスの分配の哲学を日本の終身雇用制や年功序列賃金制度は受け継いだのだが、バブル崩壊以降の厳しい経済状況の中で企業は従業員の面倒を定年まで見ることが困難になり、同時に、転職や派遣社員といった新しい就業スタイルも生まれ、日本の大企業の多くは賃金体系を共同体的分配から成果主義的分配へ傾斜させていった。
成果主義の人事制度では、「個人の成果」を重視し、続いて「個人が保有する能力・スキル」や「個人の職務」(地位、担当)を評価する一方、「扶養家族の有無」(ライフステージ)や、「年功」(勤続年数)にはこだわらない。
自由主義経済の下では「結果の平等ではなく、機会の平等」を標榜しており、成果主義は労働の対価として理論的な経済合理性はあるのだが、次第に「成果」とは何かに客観性が無い、社員全体がライバルとなり社内のつながりが希薄化する、短期的な成果をもとめ挑戦しない企業風土になる等の成果主義による弊害が多く現れ、現在ではほとんどの会社で成果主義の運用を停止する方向にある。
一方、中小企業の社員にからは、
①この会社で働き続けても将来がどうなるか先が見えない、
②どう評価されて給与や賞与が決まるのかわからない、
③不平不満があっても言い出せない、
④仕事が出来ない人の賃金が高い、
⑤部署や上司によって評価がマチマチだ
などなど賃金制度に対する不満が続出している。
あさひ会計の人事制度も、当初は共同体的分配を標榜していたのだが、次第に成果主義的分配に傾斜して行き、社員間の人間関係にもギスギスしたものが生じるようになっていた。そこで、新たに人事コンサルタント松本順市氏の理論をもとに新・人事制度を導入することとした。
新・人事制度では、
①どれだけチームのために貢献したのか、
②どれだけ部下の成長を助けたのか、
③どれだけ自分を高めたのか、
を評価し、社員の成長を支援する制度となっている。
この人事制度では㋑成長支援制度、㋺ステップアップ制度、㋩賃金制度、㊁教育制度で構成されているが、例えば、成長支援制度では評価期間中の「期待成果の実現度」、「重要業務の遂行度」、「知識・スキルの習得度」、「共通の価値観の遵守度」を評価して社員の成長を促している。また、賃金制度では「年齢給」、「勤続給」を設け一定の生活保障をするとともに、「成長給」を社員の成長に応じて支給して社員の成長を促している。さらに諸々の目的をもった諸手当が支給される。
あさひ会計のグループ会社である㈱旭ブレインズでは、これまでも人事制度に関するコンサル業務を実施してきたが、新たに松本方式による新・人事制度のコンサルを開始した。