本音でぶつかれ(2018年_5月号)

 

京セラの稲盛和夫名誉会長が、創業時に経営の経験や知識のない自分がどうしたら会社を発展させることができるだろうかと悩んだ末思いついたのが「人間として何が正しいのか」を自ら問い、正しいことを正しいまま貫いていくことだったという。そうした考えで真摯に仕事や経営にあたり、その中から生まれた考え方が「京セラフィロソフィ」である。
 
あさひ会計では毎月の幹部会議でこの「京セラフィロソフィ」を一説ずつ輪読しているが、この中に「本音でぶつかれ」という項目があった。

責任を持って仕事をやり遂げていくには、お互いに気づいた欠点や問題点を遠慮なく指摘しあうことが必要だ。「なあなあ」で済まさずに、絶えず「何が正しいか」に基づいて本音で真剣に議論しなければならない。嫌われるのを恐れるあまり、和を保とうとするのは大きな間違いだと稲盛氏は指摘している。ときには口角泡を飛ばしてでも、お互いの考えをぶつけ合っていくことが大切で、この中から本当の信頼関係が生まれ、良い仕事ができるようになるのだというのだ。
 
私も何度か「本音でぶつかり」あったことがある。ある幹部から「先生のMQ会計は間違っている」と指摘され、「何が間違っているのか」とそれこそ大声で口角泡を飛ばして1時間を越える大議論になった時があった。

その場は双方とも憤懣やるかたなく終わったのであったが、後日、彼は「先生のMQ会計は、これまでのMQ会計と違うMQだ」と言ってきたのである。私は今年の3月に『実践MQ会計』という本を発刊したのだが、彼との議論が本を書こうと思った理由の一つだ。そして、彼との議論の最中、彼の指摘に反論するたびに私はMQ会計の真髄を一つ、また一つと発見していったことを覚えている。
しかし一般的に会社の中では本音でぶつからず、建前で仕事を進めている人が大半だろう。今までやってきたとおりにやればいい、あえて革新的な手法をとって、ことを荒立てる必要はないというのが建前で仕事をしている人の言い分だ。中小企業は毎日毎日が修羅場だから、建前論で済ませられる仕事なんかはない。会社を発展させていこうと思えば、本音でぶつかり合わなければできないのだ。とはいえ、本音でぶつかり合うとなると周囲に気を使い、二の足を踏んでしまう。その結果、後々会社にとっては非常に大きな問題になってあらわれてくるのだ。

ただし、本音丸出しで議論をするにしてもルールがある。相手の欠点をあげつらうなど、足を引っ張りあうような言動はご法度だ。建設的でポジティブな議論は創造的な結論にたどり着けるはずだ。

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