脱税の代償(2019年_8月号)

 今年も相も変わらず脱税告発のニュースがでている。

この数か月だけても、コインランドリー業48百万円脱税、家具輸入仲介業83百万円脱税、調理器具会社47百万円脱税、アイドル衣装会社等64百万円脱税など、上げればきりがない。

脱税額が30百万円を超えると刑事告発されるといわれている。
脱税も一定額を超えると、その担当課から、査察部に引き継ぎされる。査察部に引き渡す逋脱所得の基準もきまっている。任意調査の税務調査と裁判所の令状のある査察部の権限は全く違う。任意調査では、事前予告なしで調査に来た場合「後日調整して」と帰ってもらえる。しかし、査察部は突然会社に令状をもってやってきて全員をフリーズさせて、全員の机からカバンの中身まで確認できる。任意調査ではできない権限を与えられている。

経済取引の実態は、すべて法律に明文化されているわけではない。税務判断は、各社の事情、サービスの特徴、時系列の状況等、個別具体的に法律趣旨に照らして判断される。
税務判断には、白、グレー、黒の世界がある。

①税務判断に異論を差し入れる余地のない、問題のない白
②法律には明文されてなく法律の趣旨や実態から判断するグレー、あるいは外形的には黒っぽくみえるが、その背景や発生経緯からみると白と判断しうるグレー
③外形的に白あるいはグレーにみえるがその実態から判断し本当は黒、など。

グレーと黒の間はグラデーションであり、そのボーダーは専門家でも判断が難しい。

また、黒の申告をした税理士自体も処分の対象になる。業務停止、資格停止などがあるが、こちらも国税庁の掲載や報道も後を絶たない。

黒の世界に足を踏み入れた経営者は自分では後戻りはできない。
だれかが止めてあげる必要があるが、それが出来るのは会計事務所だけであろう。脱税の結果、もたらされる会社と経営者の社会的信用の失墜、調査や査察の取り調べ、その失う時間とストレス、働く社員、取引先の見る目の変化、家族へ与えるストレス。脱税の代償は金銭では賄えない。
胸を張った申告内容とする経営者の姿勢、それを後押しする会計事務所の役割は重要だ。

 

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