新型コロナウイルスの行方(2020年_5月号)

 

今、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。感染症は古代の天然痘から、中世のペスト(黒死病)、近代のコレラと続き1918年に発生したスペイン風邪では世界の人口8億人のなかで4千万人という膨大な人々の命を奪った。

新型コロナウイルスから命を守るためには、出来るだけ早く中国のように都市封鎖をしてあらゆる人々の接触を絶ち感染を防止すればいい。一方、人間は経済活動を行わなければ収入を生み出せず食べていくことはできない。ビジネスを継続していかなければ、社会活動のすべてが機能不全となる。この①「命を守る」ことと、②「経済活動の継続」のバランスの上に社会は成り立っている。

例えば日本では2019年38万件の交通事故が発生し、3,215人の死亡者を数えた。しかし、街に出れば自動車事故にあう危険があるからとすべての人が街に出なくなれば経済活動は立ち行かなくなる。不遜な言い方かもしれないが日本では3,000人の交通事故による命を犠牲にしながら車社会を維持し、経済活動を継続しているのが現実だ。

2018年の季節性インフルエンザによる死亡者数は3,325人だ。2019年も9月までに死亡者数は3,000人を超えている。しかし、緊急事態宣言をすることもなく経済活動は継続している。それがこれまでの日常だ。

新型コロナウイルスも60%~70%の人が感染して集団免疫が出来ればウイルスは行き場を失い終息するといわれているが、現時点では60%~70%の人が感染するまでにどれくらいの人が死亡するのかが問題だ。一挙に感染すれば医療崩壊が起き多数の犠牲者が出るだろう。その為、国は緊急事態宣言を出して人々の行動を規制し、接触を避けさせ、出来るだけゆっくりと感染させて医療崩壊を防いでいる。この「医療崩壊」が3つ目のポイントだ。

急速な感染による医療崩壊を防ぎつつ死亡者数を抑え、新薬による治療法の確立やワクチンの開発による抗体保有者の増加を待っているのが現状だ。とはいえ、経済活動をいつまでも抑えておくわけにもいかない。中小零細企業は疲弊し、失業者が増加し、それこそ経済が息切れして社会が崩壊してしまう。

「医療崩壊」を防ぎつつ「命」を守り、かつ「経済活動」を継続する、その接点を探らなければならない。〇新薬が出来て治療法が確立する、〇ワクチンが開発され抗体保有者を増やす、〇自然感染者が一定数に達し多くの市民が免疫を持つ、その時期を睨みつつ新型コロナウイルスによる死亡者数を最低限に抑えながらも経済活動を段階的に復活させるしかないのだろう。

経営者はその復活に備え、新しい世の中に対応すべく、今こそ準備を進める時だ。

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